欧州仕様ハイエースベースのLクラスミニバン「グランビア」
1970年代にルーツをもち、室内が広く、かつ使い勝手に優れるクルマとして1980年代に大人気だったのがワンボックスだ。ワンボックスというと商用車や仕事の足というイメージが強いが、乗車用のワゴンも用意されていた。コンセプトは現在のミニバンに近くて、複数列のシートとシート表皮や内張りなどに乗用車的な豪華なものを採用するなど、自家用車やレジャーにも使うことができた。ハイエース、ホーミーなど、メーカー問わずそのような傾向で、やはり現在のミニバン的な存在だった。
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1990年代に入ると、衝突安全性が高いレベルを要求されるようになる。ワンボックスについてはクラッシャブルゾーンとなる短いノーズを備えるなどの対策が必要となった。
当時すでに高級ワンボックスとして名を馳せていたトヨタのハイエースも同様だった。ちなみにミニバンブームが始まったのがホンダからオデッセイが登場した1994年とすると、かなり前のことになる。
しかし、アメリカ市場での動きなどを考えると日本市場でもバンを乗用で使う時代がくると考えたのか、開発を中断することなく、新たな手をトヨタは考える。ヨーロッパ向けのハイエースに目を付け、それを国内向けにアレンジして1995年に登場したのがグランビアである。
現在の感覚ではもちろんのこと、当時としては相当大型で3列シートを備えるモデルだった。先に触れたように、1994年になるとオデッセイが起爆剤になってミニバンブームが到来。グランビアのような大型ミニバンもLクラスとしてひとつのジャンルを確立していた。
Lクラスミニバンというジャンルに1997年、日産が放ったのがエルグランドだった。SUVのテラノをベースにミニバンにしたモデルで、メッキのグリルで存在感をアピール、室内も高級車のような仕立てだった。現在のエルグランドやアルファードなどと同じ手法であり、そのルーツと言っていい。この点は商用ワンボックスベースのグランビアにとってハンデとなり、エルグランドが大人気ミニバンへと成長した一方、トヨタは珍しく大惨敗を喫した。
挽回策として誕生したのが2002年の初代アルファードである。ちなみにホンダから2004年に同じLクラスのエリシオンが登場している。
FFに変更してパッケージングが向上し誕生した初代アルファード(10型)
根本面から見直して、ベースをFFの2代目エスティマに変更。さらに車名を現在も使われているアルファードとした。ちなみに登場タイミングはエルグランドのフルモデルチェンジと同時期だった。エンジンはエスティマ譲りの3ℓV6に加えて、経済性に優れ、税制上も有利な2.4ℓ直4も設定した。大型のメッキグリルなどで迫力を増し、さらに内装も高級感にあふれるなどで大ヒット。日本専用とすることで、車内はウッドパネルを多用するなど、日本人好みの高級感の演出に成功している。その結果、エルグランドを逆転、高級ミニバントップに躍り出た。2003年にはエスティマハイブリッドから流用したハイブリッドを追加。後輪がモーター駆動のE-Fourを採用し、燃費は10・15モードで17.2km/ℓを達成した。
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STYLEWAGON(スタイルワゴン)2024年6月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]